近年、ソーシャルメディアに関する規定を作成する会社が増えています。

ソーシャルメディアの不適切な利用により、会社が損害を被る機会が増えているためです。

今回の記事では、ソーシャルメディア規定の必要性とともにその内容についても紹介いたします。

ソーシャルメディア規定の必要性

もう10年ほど前のことですが、会社の業務用冷蔵庫の中に社員が入った写真がSNSに投稿され、これがニュース等で報道されることにより会社の信用が著しく毀損したといった事例がありました。

また、社員が特定の第三者を誹謗中傷する内容をSNSに投稿したことが問題となった事例も数多くあります。

ソーシャルメディアの特徴の一つとして、ある投稿が瞬く間に拡散され炎上してしまう可能性があるという点が挙げられ、その取扱いには十分に注意する必要があります。

したがって、事前にソーシャルメディア規定を定めることで社員に注意喚起をするとともに、違反した際には懲戒処分や損害賠償請求を行うことが出来るようになります。

ソーシャルメディアとSNSの違い

ところで、ソーシャルメディアとSNSの違いをご存知でしょうか。

近頃はほとんど同じような意味合いで使われることも増えてきましたが、実際は微妙に異なります。

そして規定を作成する際には言葉が定義付けが重要となってきますので、ここで整理しておこうと思います。

ソーシャルメディアとは

ソーシャルメディアについて、総務省では

ソーシャルメディアとは、インターネットを利用して誰でも手軽に情報を発信し、相互のやりとりができる双方向のメディアであり、代表的なものとしてブログ、FacebookやTwitter等のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、YouTubeやニコニコ動画等の動画共有サイト、LINE等のメッセージングアプリがある

としています。

>>総務省|平成27年版 情報通信白書|ソーシャルメディアの普及がもたらす変化

SNSとは

上記、総務省のソーシャルメディアについての説明の中にSNSがあることからも分かるように、SNSはソーシャルメディアの一部であるといえます。

SNSの正式名称は「Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)」であり、社会的なつながりを提供するサービスのことをいいます。

ここでいう「社会」とは特定のプラットフォームのことを意味し、具体的には、Instagram、Twitter、Facebookなどが挙げられます。

利用目的としては大きく

  • ソーシャルメディア:メディア
  • SNS:コミュニケーションツール

のように分けられるものの、最近ではSNSでもメディア性を持っていたり、ソーシャルメディアの中にもコミュニケーションツール機能を持つものも多く、きれいに分別することは難しくなってきています。

ただし規定を作る際には、より範囲を大きく「ソーシャルメディア規定」とした方が良いでしょう。

ソーシャルメディア規定の内容

次に規定の内容について見ていきます。

ソーシャルメディア規定の内容としては、まず禁止事項をしっかり規定する必要があります。

禁止事項は会社によって様々ですが、

  1. 会社の機密情報を開示すること
  2. 顧客情報や個人情報を開示すること
  3. 第三者を誹謗中傷すること
  4. 差別的な表現を用いること
  5. 猥褻な内容を発信すること
  6. 違法行為、またはこれを助長する内容を発信すること
  7. 公序良俗に反する内容を発信すること

などが挙げられます。

また、令和5年からはステルスマーケティングが景品表示法違反となります。

景品表示法の対象となるのは事業者(広告主)だけですが、それを知ってステルスマーケティングをしているとトラブルに発展する可能性があります。

社員がそういったトラブルに巻き込まれるだけでも会社は信用の毀損に繋がりますので、ステルスマーケティングについても禁止することを考えても良いかもしれません。

懲戒処分および損害賠償請求

禁止事項を規定するだけでも注意喚起にはなります。

しかし実効性を確保するためには、禁止事項に違反した場合は懲戒処分の対象となることや、損害賠償請求を行う可能性があることまで定めておくべきでしょう。

特に懲戒処分については根拠となる規定が必要ですので、どういった禁止事項に違反した場合にはどういった懲戒処分の可能性があるのかまで定めておきましょう。

まとめ

以上、今回は、ソーシャルメディア規定の必要性とその内容について紹介しました。

いまやソーシャルメディアは生活の中に入り込んでおり、完全に禁止することは現実的ではないでしょう。

無理に禁止することで社員はいわゆる「裏アカ」のようなものを作成し、かえって良くない結果を招くことも想定されます。

ソーシャルメディアを完全に禁止するのではなく、利用は認めつつも、会社として禁止すべき事項はきちんと禁止する。

そのうえで「ソーシャルメディア規定」をしっかり作っておくことが社員への注意喚起にも繋がるはずです。