令和5年3月30日に労働基準法施行規則の改正が行われ、令和6年4月より施行となります。
いくつかある改正事項の中で、
- 労働条件明示事項の追加
は広範囲に影響があり、また施行されてからでは対応が後手に回ってしまうケースもあるため、4月の施行にむけて事前の準備が必要です。
そこで今回は、労働条件明示事項の追加について解説いたします。
追加となる労働条件明示事項
今回の労働基準法施行規則の改正では、労働条件明示事項として
- 就業場所・業務の変更範囲
- 通算契約期間または更新回数の上限
- 無期転換に関するルール
が追加になります。
これらの事項について、対象労働者、明示のタイミングは以下の通りです。
追加される明示事項 | 対象労働者 | 明示のタイミング |
就業場所・業務の変更の範囲 | すべての労働者 | すべての労働契約の締結・更新時 |
通算契約期間または更新回数の上限 | 有期契約の労働者 | 有期労働契約の締結・更新時 |
無期転換に関するルール | 有期契約の労働者 | 無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新時 |
就業場所・業務の変更の範囲
今回の改正では、すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、
- 「雇入れ(更新)直後」の就業場所および業務の内容
- 就業場所および従事すべき業務の「変更の範囲」
の明示が必要になりました。
これまでも「雇入れ(更新)直後」の就業場所および業務の内容は明示事項でしたが、雇入れ後の異動や業務内容の変更については明示がなく、特に異動に際してトラブルとなるケースがありました。
そこで、雇い入れ後の異動や業務内容の変更についても、変更となり得る範囲が明示事項として追加になります。
追記される箇所
就業場所・業務の変更の範囲については、現行の「就業の場所および従事すべき業務に関する事項」に追記されます。
そのため労働条件の明示の際には書面の交付が必要となる項目になりますので注意が必要です。
通算契約期間または更新回数の上限の明示
次に通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限の明示についてです。
こちらは有期契約の労働者が対象となり、
- 通算契約期間1年まで
- 契約更新は4回まで
のような契約内容がある場合に明示が必要となります。
また、この明示事項の追加と合わせて改正された告知において、更新上限を新設または短縮する場合にはその理由を有期雇用労働者にあらかじめ説明が必要とされています。
今回の改正にあわせて更新上限を勝手に新設・短縮することはできませんので注意が必要です。
追記される箇所
通算契約期間または更新回数の上限については、現行の「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」に追記されます。
ですので、こちらは有期労働契約を更新する可能性がある場合に限り、その明示と書面の交付が必要となります。
無期転換に関するルール
最後に、無期転換に関するルールについての労働条件の明示です。
今回の改正によって、無期転換申込をすることができる有期労働契約の締結時については
- 無期転換申込に関する事項
- 無期転換後の労働条件
これらの項目について労働条件の明示が義務付けられました。
なお「無期転換申込に関する事項」としては、
- 無期転換を申し込むことができる旨
- 申込の所定の手続き
などが挙げられます。
無期転換の申込について
この無期転換の申込権については、通算契約期間が5年を超す契約期間中に発生します。
例えば、1年ごとの更新の場合、5回目の契約更新の後の契約期間に無期転換申込権が発生します。
3年ごとの更新の場合、初回の3年契約が終わった後、更新した次の契約期間中から当該労働者は無期転換の申込をすることが可能です。
そして、今回の改正では、この無期転換申込権が発生する契約の更新の際に
- 無期転換申込に関する事項
- 無期転換後の労働条件
これらの明示が必要となるわけです。
そしてこの明示は、1回限りではなく、労働者が無期転換申込をしない場合、契約更新のたびに必要となります。
無期転換ルールの書面での交付
なお追加される2つの事項のうち、「無期転換申込に関する事項」については、労働条件の明示の際に書面の交付が必要な事項となります。
一方の「無期転換後の労働条件」については、通常の労働条件の明示と扱いが同じとなります。
つまり、書面の交付が必要とされている事項については、無期転換後の労働条件を明示する際にも書面の交付が必要となります。
無期転換に関するルールについての労働条件明示は、これまでにないタイミングでの明示事項の追加となるため、実務上、明示漏れがないよう注意する必要があります。
まとめ
以上、今回は、令和6年4月より施行となる労働基準法施行規則改正の中で、労働条件明示事項の追加について紹介しました。
一部の事項については、すべての労働者との契約に影響します。
厚生労働省からモデル労働条件通知書も公開されていますので、参考にしながら早めに準備を進めましょう。