「モノからヒトへ」といわれて薬局に求められる業務が大きく変わる中で、薬剤師だけでなく調剤事務員の業務内容も大きく変わってきています。
いわゆる0402通知により、調剤業務の一部が一定の条件下で非薬剤師でも可能となりました。
それにより、調剤事務員にも調剤業務の一部を行うよう求める薬局が増えました。
しかし、これまで調剤事務として事務作業だけしていた者に対して調剤業務を行うよう命じるためには、少し気を付けることがあります。
安易に命令してしまうと権利濫用とされてしまいます。
今回の記事では、調剤事務から調剤補助へ配転する際に気を付けるべきことをまとめます。
原則として配転命令は可能
就業規則や雇用契約書に「配転することがある」という主旨の記載があれば、本人の同意がなくても会社から配転を命じることは可能です。
しかし、職種や職場を特定して雇用している場合には会社が一方的に配転を命じることはできません。
そういた意味では、採用時の契約内容や就業規則が重要といえます。
その他、
- 業務上の必要性がない場合
- 内部告発への報復などの不当な動機・目的をもって命令された場合
- 育児介護に重大な支障をきたすなど従業員の不利益が非常に大きい場合
こういった場合には、権利濫用となって配転命令が無効となる可能性があります。
職種限定合意が認められることはあるのか
前述のとおり、就業規則や雇用契約書において特別に記載がない限り、会社は配転を命じることが可能です。
しかし薬剤師などの専門職については職種限定合意が認められやすいという考え方もあります。
つまり、長期間同じ専門職として働いていたのだから職種限定合意だった(だったようなものだ)という主張です。
この主張についても、20年近く同じ専門職で働いていた労働者について職種限定合意がは認められないとした裁判例もあります。
いずれにしろ、調剤事務は薬剤師ほど専門性が必要な仕事ではありませんので、「ずっと同じ仕事をしてきたのだから他の仕事をすることはない」という従業員の考えのみで職種限定合意が認められることはないでしょう。
労働条件通知書の記載
また、たとえ労働条件通知書に「調剤事務業務」といった記載があったとしても、すぐに配転が不可能というわけではありません。
現行の法において労働条件通知書は最初の業務内容という意味に過ぎず、それのみで職種限定合意が認められるわけではありません。
これについては、店舗間の異動のことを考えれば理解しやすいかと思います。
最初に労働条件通知書に記載された店舗へ配属されますが、その後に他店舗へ異動となるケースは多いはずです。
それと同じことです。
まとめ
以上、今回は調剤事務から調剤補助へ配転することは可能かという内容の記事でした。
就業規則や雇用契約書に「配転することがある」という主旨の記載があれば、本人の同意がなくても会社から配転を命じることは可能です。
法的な考え方では、そうなります。
しかし、本人の意思に反して配転を命じたところで、どれだけモチベーション高く働いてくれるでしょうか。
モチベーション高く働いてもらうためにも、法的な考え方だけでなく、配転が必要な理由などを丁寧に説明するなど、従業員のモチベーションの部分でのマネジメントが大切になるでしょう。