会社役員が原則として、雇用保険に加入することができません。
ただし一定の要件を満たすことで、例外的に雇用保険に加入することができます。
雇用保険に加入しておくことで、特に育休時などにメリットがあるので今回紹介いたします。
兼務役員とは
会社役員とは、会社の業務執行、業務・会計の監査などに権限をもつ経営陣のことをいい、従業員には該当しません。
そのため、会社役員は原則として雇用保険に加入できません。
しかし、会社の登記上は役員でも、それと同時に部長や支店長等の従業員としての身分を有する場合、服務態様、賃金等からみて労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り、雇用保険に加入することができます。
このような会社役員を「使用人兼務役員(以下、兼務役員)」といいます。
会社役員が雇用保険に加入するための要件
会社役員が雇用保険に加入するためには、一般的に以下の要件を満たしていることが求められます。
- 代表取締役・監査役でないこと
- 代表権や業務執行権を有していないこと
- 業務執行権を有する役員の指揮命令を受け、通常の労働者と同様の労働条件で労務を提供し、その労働の対償として賃金を受けていること
- 賃金と役員報酬の両方を受ける場合、賃金が役員報酬を上回っていること
これらの要件に基づき、実態が従業員に該当するかどうかを総合的に判断されることになります。
会社役員が雇用保険に加入するための手続き
会社役員が雇用保険に加入するためには、事前に兼務役員の認定を受ける必要があります。
具体的には、
- 兼務役員雇用実態証明書
- 登記簿謄本
- 定款
- 取締役会議事録
- 就業規則
- 賃金台帳
- 出勤簿
これらをハローワークに提出します。
そこで
- 報酬
- 勤怠管理
- 指揮命令の有無
などの観点から、他の従業員と同等の待遇を受けているかどうか総合的に判断されます。
ハローワークによって運用が異なる場合もあるので、手続きする際には事前に管轄のハローワークに確認して置いた方が良いでしょう。
兼務役員の雇用保険料
兼務役員が負担する雇用保険料は、役員報酬を除いた賃金部分にのみ雇用保険料率を乗じて計算します。
労働保険の年度更新の際に忘れがちなので、必ず賃金総額に含めるようにしましょう。
兼務役員の注意点
会社役員は出勤簿等で勤怠を管理する必要はありませんが、兼務役員として雇用保険に加入する場合は勤怠管理を行い出勤簿を作成する必要があります。
また、役員報酬が従業員としての給与を上回ることになったときには雇用保険の被保険者資格を喪失してしまうので、役員報酬の改定時には注意が必要です。
まとめ
以上、今回は会社役員が兼務役員として雇用保険に加入する方法について紹介いたしました。
実際には兼務役員のような働き方でも、雇用保険に加入していない会社役員も多いです。
しかし今後出産育児を予定しているような場合には、雇用保険に加入するメリットも大きくなります。
この機会に検討してみてはいかがでしょうか。