7月10日、第107回社会保障審議会介護保険部会が開催され、医療・介護・保育分野の有料職業紹介事業等の制度見直しに関する内容が示されました。
医療・介護・保育分野においては、
- 労働者を採用する際の職業紹介事業者に支払う手数料が高い
- 転職勧奨により早期離職してしまう
などといった問題点が継続的に指摘されており、対応策が議論されています。
これまでの対応
厚生労働省ではこれまでにも、
- 手数料等の情報開示義務
- 返戻金制度の推奨
- 就職後2年間の転職勧奨の禁止
- 「就職御祝い金」等の禁止
- 『「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口』を都道府県労働局に設置
- ハローワークにおける人材確保対策コーナーの拡充
などといった対応を講じてきました。
今後の対応
今回の部会での議論等を経て、今後は以下のような対応がとられることになります。
■悪質な職業紹介事業者の排除
- 『「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口』の一層の周知
- 3分野の有料職業紹介事業者に対して、転職勧奨・お祝い金規制に係る集中的指導監督の実施
- 求人者が適切な職業紹介事業者を選択できるよう、契約する際に確認すべきポイントをまとめたリーフレットの作成
■有料職業紹介事業のさらなる透明化
- 3分野の紹介手数料の平均値・分布、離職率について、地域(都道府県または広域のエリア)ごと、職種ごとに公表
- 離職状況の公表状況が不十分な事業主に対して追跡調査を徹底させるとともに、離職者数の掲載期間を現行の2年から5年へ延長
■優良な紹介事業者の選択円滑化
- 3分野適正事業者認定制度の認定基準に、6か月以内に離職した場合に返戻を行うことの追加を含め、認定基準の見直しについて検討し、必要な措置を講ずる
■ハローワークの機能強化
- 労働者が定着しない理由に着目した求人者への支援を関係機関と協力し実施
- 業界団体と連携したイベント開催等の実施
- オンライン上での求人・求職者の利用推進
- ハローワークごとの職種別就職実績を毎年度公表
「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口について
法令により、⼈材紹介会社は以下の事項を遵守する必要があります。
- 手数料を必ず明⽰する
- 自らの紹介により就職した人に対して、就職した⽇から2年間は転職の勧奨を⾏ってはいけない(無期雇用契約に限る)
- 「お祝い⾦」その他これに類する名目で、社会通念上相当と認められる程度を超えて求職者に⾦銭等の提供を⾏ってはいけない
しかし、特に医師・看護師などの医療従事者や介護従事者、保育士などの採用にあたっては、紹介⼿数料など職業紹介の条件等についてトラブルが多発しています。
そこで厚生労働省では、2023年2月より、各都道府県労働局にこれらの分野の求人者を対象とした特別相談窓口を設置しました。
相談窓口に寄せられた情報を基に、職業紹介事業者に手数料の明示義務違反等がないか把握し、必要な対応を行っていきます。
もし⼈材紹介会社の職業紹介サービスに関して法令違反の疑いがある場合には、最寄りの都道府県労働局『「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口』に相談をお願いします。
ハローワークの機能強化について
特に介護分野においては、介護事業者の5割が人材紹介会社を活用しているにもかかわらず、必ずしも安定的な職員の確保につながっているとは言えません。
介護職員の給与は公費(税金)と保険料を財源としており、本来は職員の処遇改善に充てられるべきものであるにもかかわらず、人材紹介会社への手数料としてかなりの金額を支払うこととなっています。
このため、介護事業者向けの人材紹介会社については、現在の規制の徹底に加え、一般の人材紹介よりも厳しい対応が必要であるとともに、ハローワークや都道府県等を介した公的人材紹介を強化すべきとされました。