近年、社会保険や雇用保険の手続きにおいてマイナンバーの記載が求められるようになりました。
しかし近頃のマイナンバーの情報管理に対する不安から、マイナンバーを教えてくれない従業員もいるようです。
特に入社時のマイナンバー提出を断られてしまうと困ってしまうのですが、会社は従業員に対してマイナンバーの提出を強制することは可能なのでしょうか。
また、どうしてもマイナンバーを教えててもらえない場合はどのように対応すれば良いのか、今回まとめます。
マイナンバーの提出に関する法令上の義務
会社は社会保険や雇用保険の手続きにおいて、マイナンバーの記載が必要とされています。
また法定調書等においても、マイナンバーの記載が義務付けられています。
しかし現状、マイナンバー法において従業員にマイナンバーの提出を義務づける規定はなく、もちろん提出を拒否しても罰則はありません。
ですので、会社従業員に対してマイナンバーの提出を強制することはできないのです。
マイナンバー提出拒否の確認書
ではマイナンバーの提供を断られてときはどうすれば良いのでしょうか。
断られたからといってただマイナンバーを未記載のまま書類を作成するのでは、単なる義務違反と認識されてしまいます。
ですので、きちんとマイナンバー提出の趣旨を説明し、それでも提供を断られた場合は、その経過を記録したうえでマイナンバー提出拒否の確認書などに署名を貰っておくと確実でしょう。
マイナンバーを教えてもらえない場合の社会保険手続き
ではマイナンバーを教えてもらえなかった場合、会社として手続きはどうなるのでしょうか。
社会保険の手続きにおいては、協会けんぽに加入している場合と健康保険組合に加入している場合とで異なります。
協会けんぽの場合
協会けんぽに加入している会社であれば、マイナンバーがなくても基礎年金番号の記載で手続きを進めることが可能です。
ただし基礎年金番号を記載する場合は、あわせて住所も記載が必要となります。
家族を扶養にいれる場合には、被保険者と被扶養者のどちらかでもマイナンバーがないと、両者の続柄を確認するために住民票等の添付が必要となります。
健康保険組合の場合
健康保険組合に加入している会社の場合は、その組合ごとでかなり対応が異なります。
ほとんどの組合ではマイナンバーがなくても手続き可能ですが、マイナンバー必須としている組合もあるようですので確認が必要です。
マイナンバーを教えてもらえない場合の雇用保険手続き
平成30年より、雇用保険に関する以下の届出にはマイナンバーが必要になりました。
- 資格取得届
- 資格喪失届
- 高年齢雇用継続給付
- 育児休業給付
- 介護休業給付
マイナンバーの記載がない場合には返戻する旨が通達されており、雇用保険の方が社会保険よりも厳しい印象です。
しかし実務上は、マイナンバーの記載がなくても届出の備考欄に
「本人事由によりマイナンバー届出不可」
などと記載することで、手続きを進めることができます。
まとめ
以上、今回は、従業員がマイナンバーを教えてくれないときの対応と、社会保険や雇用保険手続きについて紹介しました。
2023年6月には、マイナンバーカードと健康保険証の一体化の一環として健康保険法施行規則が改正され、資格取得届へのマイナンバーの記載義務が法令上明確化されました。
これによって実務上でもマイナンバーの記載が必須となることはないと思いますが、記載しない場合には手続き完了に時間がかかる(健康保険証がなかなか発行されない)ようなことも考えられます。
会社としては、可能な限りマイナンバーの収集に尽力し、届出にはマイナンバーを記載するよう心がけましょう。