厚生労働省より公表されているモデル就業規則において、「退職金の支給(54条)」が改訂されましたので紹介します。

>>モデル就業規則について|厚生労働省

就業規則への退職金制度の記載

退職金制度は、必ず設けなければいけないものではありません。

しかし制度があるのであれば、

  • 適用される労働者の範囲
  • 退職金の支給要件
  • 額の計算方法
  • 支払の方法
  • 支払の時期

などを就業規則に記載する必要があります。

また、不支給事由または減額事由を設ける場合には、これは退職金の支給要件や額の計算方法に関する事項に該当するため、就業規則に記載する必要があります。

モデル就業規則の改訂前と改訂後

モデル就業規則の改訂前と改定後を比べてみます。

改訂前

(退職金の支給)
第54条 勤続〇〇年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続〇〇年未満の者には退職金を支給しない。また、第67条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

改訂後

(退職金の支給)
第54条 労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、第68条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

改訂点

ぱっと見ただけだと気づかないかもしれませんが、

「ただし、自己都合による退職者で、勤続〇〇年未満の者には退職金を支給しない。」

の一文が削除されています。

これはつまり、モデル就業規則においては、短期間で退職した従業員に対しても退職金を支払うことになります。

モデル就業規則改訂の意図

ではなぜ、このような改訂を行ったのでしょうか。

これは、政府の「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)が取りまとめたは「三位一体の労働市場改革の指針」ですでに触れられていました。

>>三位一体の労働市場改革の指針

この指針では

  • リ・スキリングによる能力向上支援
  • 個々の企業の実態に応じた職務給(ジョブ型人事)の導入
  • 成長分野への労働移動の円滑化

を大きく3つの目標としており、この内容は6月16日に閣議決定された『骨太方針2023』にも反映されました。

>>経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)

自己都合退職に対する障壁の除去

そして成長分野への労働移動の円滑化を目標とする取り組みのひとつに、自己都合退職に対する障壁の除去が挙げられました。

民間企業の例でも、一部の企業の自己都合退職の場合の退職金の減額、勤続年数・年齢が一定基準以下であれば退職金を不支給、といった労働慣行の見直しが必要になりうる。その背景の一つに、厚生労働省が定める「モデル就業規則」において、退職金の勤続年数による制限、自己都合退職者に対する会社都合退職者と異なる取り扱いが例示されていることが影響しているとの指摘があることから、このモデル就業規則を改正する。

まさに記載の通り、モデル就業規則が改訂された格好です。

また他にも以下のような記載があります。

  • 失業給付制度の見直し
  • 退職所得課税制度等の見直し
  • 求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の共有化
  • 副業・兼業の奨励
  • 厚生労働省関係の情報インフラ整備

これらの内容も順次進められていくものと思われますので、確認しておくと良いでしょう。