一般的な会社では、新卒採用において10月1日以降に内定を出すとされています。

しかし会社としては早くから有能な人材を確保しておきたいため、10月より前から内々定の通知を出す会社も多いです。

しかし内々定の通知を早く出せば出すほど、会社の状況が変わり内々定を取り消す可能性も高くなります。

実際に内々定が取り消されて困ってしまう学生もいるため、今回は内々定取消の法的な性格についてまとめます。

労働契約とは

労働契約とは、労務の提供とこれに対する対価の支払いについての合意がなされることにより有効に成立します。

現実に労務の提供がなされなくても、契約は成立しているという状況もあり得ます。

採用内定の法的性格

これは特に採用の内定でよくみられる状況であり、

採用内定についてはその実態が多用であるため、その法的性質について一義的に論断することは困難であり、具体的な事案につき当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある(大日本印刷事件)

としながらも、一般的には、当該企業の例年の入社時期を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立していると考えられています。

そのため、

採用内定の取消しは労働契約の解約にあたり、解約の理由が社会通念上相当と是認できるものかどうかが吟味されなければならない

とされています。

内々定の取消

では、内々定の取消についてはどうなのでしょうか。

内々定の取消について行政解釈はまだ示されていませんが、裁判例としてはコーセーアールイー事件(福岡高判平23.3.10)が挙げられます。

この裁判では、平成20年5月に内々定の通知を受け入社承諾書提出後、同年9月に内々定取消の通知を受けた事例について、内々定は正式な内定とは明らかに性格を異にするものであるとして、始期付解約権留保付労働契約の成立という原告の主張を退けました。

一方で、内定通知書交付の数日前の段階で労働契約が確実に締結されるであろうという原告の期待は法的保護に値するとしたうえで、内々定の取消は労働契約締結過程における信義則に反し原告の期待利益を侵害するものであり不法行為になるとされ、損害賠償が認められました。

こういった裁判例から考えると、内定とは明確に異なるようなものであれば、内々定の段階での取消について労働契約の解約にあたるとは考えにくいです。

しかしそういった場合でも、状況によっては裁判例のように責任が生じる可能性もありますので、慎重な対応が必要です。