会社には、労働者に対し1年以内ごとに1回の定期的な健康診断を行う義務があります。

また労働者は、会社が行う健康診断を受ける義務があります。

これらは労働安全衛生法第66条に定められている内容ですが、これらの義務に違反しても罰則は定められていません。

そのため、実際には健康診断を受けていない労働者もいるのが現状です。

しかし従業員の健康管理を適切に行うためには、まずは健康診断を受けてもらいたいところ。

では会社は従業員に、健康診断を受けるよう命じることができるのでしょうか。

健康診断を命令するには就業規則に定めが必要

一般的には、健康診断は会社・従業員ともに法律上の義務であり、労働契約上の義務、つまり労働契約を結ぶだけで会社が従業員に健康診断を受けるよう命令できる、とは考えられていません。

そのため、命令するためには就業規則において合理的な内容で定めておく必要があります。

従業員が健康診断を受けることで健康状態を把握し、それにより労働時間の短縮や業務内容の変更、生活習慣病の憎悪防止につながることを考えると、就業規則において健康診断を受けるよう義務付けることは合理的といえます。

そうすることで健康診断を受ける義務は労働契約上の義務となり、会社は従業員に対して健康診断を受けるよう命令することができるようになります。

懲戒処分も可能

就業規則に健康診断を受ける義務を定めておくことで、健康診断を受けるよう命じたにもかかわらず、それに従わない従業員に対しては、懲戒処分も可能になります。

とはいっても、健康診断を受けないことに対してあまりに不適当な、つまり健康診断を受けないだけで懲戒解雇といったような処分はできないことは覚えておきましょう。

健康診断の費用負担

なお、法律上、会社に実施が義務付けられている健康診断の費用については、会社が負担するべきものとされています(昭和47年9月18日基発602号)。

その一方で、従業員は会社が実施する健康診断に代えて他の医師による健康診断を受けることも可能ですが、その場合には会社が費用負担する必要はないと考えられます。

まとめ

以上今回は、会社は従業員に対して健康診断を受けるように命令することは可能かどうかという内容でした。

結論としては、就業規則に健康診断を受ける義務を定めておくことで命令が可能になりますし、その命令に従わない従業員に対しては懲戒処分も可能になります。

近年は健康経営といった概念も広まってきており、いかに従業員に健康的に働いてもらうことで生産性を向上するかが会社経営のキーポイントとなってきています。

そのためにも、まずは従業員に健康診断を受けてもらい、健康状態を把握することが大切といえるでしょう。