高年齢者雇用安定法においては、
- 60歳未満の定年の禁止
- 65歳までの雇用確保措置
が定められており、具体的な雇用確保措置としては
- 65歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
のいずれかの確保措置を講じる必要があるとされています。
そのため多くの会社では60歳を定年としたうえで、希望する社員に対しては65歳は嘱託社員としての定年後再雇用制度で対応しています。
ここで気になるのが嘱託社員の年次有給休暇ではないでしょうか。
定年後再雇用といっても定年で一度は退職した扱いですので、
- 嘱託社員に対しては何にの年次有給休暇を付与すれば良いのか
- 残っていた年次有給休暇の日数は引き継げるのか
こういった点が問題となることも多いので、今回まとめます。
定年後再雇用社員に対する年次有給休暇の付与日数
年次有給休暇の付与日数は労働基準法で以下の通りに規定されています。
ここで問題となるのが継続勤務年数の扱いです。
定年後再雇用などにおいては、これを継続勤務とみるか否かで年次有給休暇の付与日数に大きな差異が生じます。
これに関して、労働基準法の各種規定は労働の実態に着目してその適用を考えることとされており、年次有給休暇についても次のような行政解釈が示されています。(昭63.3.14基発150)
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継続勤務とは、労働契約の存続期間すなわち在籍期間をいう。
継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する。
- 定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合(体側手当規定に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む)。ただし、退職と再採用との間に相当期間が存在し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りではない。
- 法21条各号に該当する者でも、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
- 臨時工が一定月ごとに雇用契約を更新され、6か月以上に及んでいる場合であって、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
- 在籍型の出向をした場合
- 休職とされていた者が復職した場合
- 臨時工、パート等を正社員に切り替えた場合
- 会社が解散し、社員の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括承継された場合
- 全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部を再採用したが、事業の実態は人員を縮小しただけで、従前とほとんど変わらず事業を継続している場合
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定年後再雇用はまさにこの通達のケースに該当します。
ですので、定年により一度退職し半年や1年などの相当期間経過した後にたまたま再雇用されたといった特殊なケースを除けば、年次有給休暇についてはこれを継続勤務しているものとして取り扱うことが必要と考えられます。
定年再雇用社員の年次有給休暇の残日数は引き継がれる
またもう一点、一度定年退職したことにはなりますが、そのときに残っていた年次有給休暇は再雇用時にも引き継がれるのかという問題があります。
こちらは継続勤務うんぬんというより年次有給休暇の時効(労働基準法第115条)の話になり、定年前に付与された年次有給休暇であっても付与から2年間は取得可能になります。
(時効)
第115条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
まとめ
以上、今回は、定年後再雇用した社員の年次有給休暇の付与日数などについて紹介しました。
定年後再雇用した場合には、契約内容など含めて色々論点が多いです。
同一労働同一賃金の視点からも、様々な裁判が行われています。
しかし労働基準法に関する定めでは、基本的には労働の実態に着目してその適用を考えることとされており、年次有給休暇についても同様です。
定年後再雇用の社員に関する規定作り等でご不明な点がございましたら、ぜひ一度弊事務所までお問い合わせください。