国の様々な政策により、育児休業を取得する従業員は少しずつ増えています。

その一方で介護休業の取得は増えておらず、育児休業の取得率が2021年度で女性85.1%、男性13.97%となっているのに対し、介護休業の取得率は2017年度で労働者全体の1.2%ほどでした。

介護休業の取得率の低さは介護離職にも繋がっていると考えられ、社会的損失が非常に大きいと言われています。

ではなぜ、介護休業の取得が増えないのでしょうか。

介護休業の取得が増えない原因として、そもそも介護休業の存在が認知されていないということが挙げられると思います。

そしてそれと同時に、介護休業期間中の社会保険料や雇用保険料の扱いについてもあまり知られていませんので、今回紹介いたします。

介護休業とは

そもそも介護休業とは、要介護状態にある家族の介護のために長期の休みを取得できる制度です。

育児介護休業法により定めており、対象となる家族1人につき通算93日、最大3回まで分割して取得することが可能です。

介護休業中の賃金について、育児介護休業法においては定められていません。

そのため賃金が支払われない会社も多いですが、その場合には一定の要件を満たすことで雇用保険から介護休業給付金を受給できます。

介護休業期間中の社会保険料と雇用保険料

そんな介護休業について、育児休業の場合は社会保険料の免除がありますが、介護休業の場合はどうなるのでしょうか。

介護休業期間中も育児休業と同様、社会保険も雇用保険も、どちらも被保険者資格が継続されます。

そのうえで、会社から賃金が支払われない場合でも社会保険料や雇用保険料は発生するのでしょうか。

介護休業期間中の雇用保険料

雇用保険が含まれる労働保険については、保険料は従業員の受け取る賃金に保険料率を乗じて算出されます。

ですので、介護休業期間中は会社から賃金が支払われない場合、雇用保険料もゼロになります。

雇用保険から介護休業給付金を受給する場合でも、給付金に対しては雇用保険料がかからないので安心です。

介護休業期間中の社会保険料

一方の社会保険料については、介護休業期間中に賃金が支払われない場合であっても納付の義務があります。

そして育児休業の場合のように本人負担分と会社負担分の免除の仕組みもありませんので、介護休業期間中については通常通り保険料を納付しなければなりません。

もちろん介護休業期間中に会社から賃金が支払われなければ介護休業給付金を受給できますので、収支としてマイナスになることは滅多にありません。

しかし「育児休業は社会保険料が免除されるのに何故・・・」と思ってしまうのも仕方ない気がします。

こうしたこともあり育児介護休業法では、介護休業に関する内容を従業員に周知させる努力義務が会社に課されています。

そしてその内容の1つに、

  • 労働者が介護休業期間について負担すべき社会保険料を事業主に支払う方法に関すること

が挙げられています。

介護休業期間中は社会保険料が免除されない理由

ここまで介護休業期間中の社会保険料と雇用保険料について紹介しましたが、なぜ介護休業期間中は育児休業と違って社会保険料が免除されないのか、理由が気になる方も多いと思います。

その理由は明らかにされていないのですが、巷では、

「育児休業と比べて介護休業は短期間であり、さらに分割取得も可能なため」

と言われています。

育児休業は1年や2年取得することもありますが、介護休業は最長で93日間、さらに最大3回まで分割して取得することも可能です。

社会保険料は日割りされず月単位で金額が決定しますので、短期間での取得や分割取得は馴染まないということです。

育児休業も短期間での取得や分割取得が制度化

しかし近年では、育児休業も短期間での取得や分割取得が制度化され、社会保険料の免除も対応しています。

そういう意味では、今後は介護休業期間中の社会保険料も免除されていく可能性があるのではないでしょうか。

介護休業中の社会保険料の徴収方法は?

ここまで紹介した通り、介護休業期間中は社会保険料が免除されません。

そのため、会社としては介護休業中の従業員からも社会保険料を徴収する必要があります。

しかし介護休業中賃金を支給しない場合、給与から社会保険料を天引きすることができませんので、社会保険料の徴収方法を検討する必要があります。

よく行われている方法としては

  • 介護休業中の従業員に毎月の振込を依頼する
  • 復職後の給与でまとめて徴収する

などがあります。

毎月の振込を依頼する方がオススメ

ではどちらの方法がお勧めかというと、私としては前者です。

後者の方法は、事務作業が少なくなるというメリットがあります。

しかしデメリットとして

  • 徴収する保険料が高額となってしまう(一回の給与で賄えないことがある)
  • 結果的に復職できず退職に至ることがある

などがあるため、すこし手間はかかってしまいますが、毎月の振込を依頼した方が良いと思います。

まとめ

以上、今回は、介護休業期間中の社会保険料と雇用保険料について紹介しました。

育児休業の取得率ばかりが注目されるなか、介護休業についてはあまり注目されず、制度の存在自体が知られていないという現状があります。

しかし介護離職の問題は以前から言われており、今後も続いていくものと思われます。

社会保険料が免除されないなど、介護休業には育児休業と異なる点もあります。

そういった点や雇用保険からの給付金も含め、従業員に周知していく必要があるでしょう。