社員に毎月の給与を支給する際、おそらくどこの会社も給与明細書を交付していると思います。

しかしその根拠をご存知でしょうか。

なんとなく労働基準法に規定されていると思っている方も多いと思いますが、実は労働基準法には規定されていません。

そこで今回は給与明細書交付義務の根拠について紹介します。

給与明細書について労働基準法では定めていない

給与明細書について、労働基準法では特段の定めがありません。

労働基準法で定められているのは

  • 賃金支払いの5原則
  • 口座払いの要件
  • 雇入れ時の賃金明示義務
  • 就業規則における賃金の定めをするべき義務
  • 賃金台帳の整備義務

です。

このうち賃金台帳の整備義務では、「基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額」を記入しなければなりません。

しかし賃金台帳は事業場に備え付けるものであり、労働者各人に公布するものではありません。

したがって、労働基準法では給与明細書の交付義務は定められていないということになります。

口座払いの場合は発行の行政通達あり

ただし賃金の口座払いに関する行政通達において、口座振込の対象となった労働者に対しては、

  • 基本給
  • 手当その他賃金の種類ごとの金額
  • 源泉徴収税額
  • 社会保険料等の賃金から控除した金額がある場合はその事項ごとの金額
  • 口座振込を行った金額

について記載した計算書を交付することとされています。(平成10.9.10基発530)

あくまで政通達ですので、給与明細書を交付していないということで労働基準監督署から行政指導を受ける可能性はありますが、労働基準法に違反というわけではありません。

所得税法などに規定あり

ここまで労働基準法により義務はないことが分かりますが、労働保険徴収法や健康保険法等にも関係する規定があります。

これらの法律では、保険料の控除に関する計算書の作成とその控除額の通知の義務が定められています。

また、所得税法には、給与所得者は給与の支払を受ける者に対し、支払明細書を交付しなければならないという規定があります。

これらの法律による規定だけを考えれば、現在よく使われている給与明細書の項目が全て必要ということはありません。

しかし口座振込に関する規定や、現状かなりの割合で口座振込により給与が支払われていることを踏まえると、現在よく使われている給与明細書の交付は理にかなっていると言えます。

まとめ

以上、今回は給与明細書の交付義務とその根拠について紹介しました。

労働基準法には給与明細書の交付に関する規定はありませんが、その他の法律に関連する規定があります。

また口座振込に関する行政通達で、給与明細書の交付とその記載事項について発出されています。

近年はオンラインで給与明細書を交付する会社も増えています。

もし紙の給与明細書を交付することを面倒に感じているようなら、そういったオンラインのシステムを利用しているのも良いのではないでしょうか。