会社員には、出張が避けられないこともあります。
しかし出張時間のうち、どこからどこまでが労働時間にあたるのか、迷うこともあるのではないでしょうか。
また複数日にわたる出張の場合、その期間中に休日があった場合は休日労働にあたるのでしょうか。
このあたり、実際にトラブルになることも多い論点ですので今回紹介いたします。
出張期間中の休日は休日労働にあたらない
労働時間にあたるかどうか、休日労働にあたるかどうかは、使用者の指揮命令下にあるかどうかにより判断する必要があります。
出張の場合は職場内での労働と同じような形での指揮命令はありませんが、これだけで労働時間にあたらないとは言えません。
しかし所定休日であれば、出張期間中といえども労働の義務のない日であり、自由に過ごすことができるはずです。
所定休日は労働を予定した日ではありませんから、特別の命令がない限り、出張中というだけでは労働時間には該当しません。
もちろん単に家庭を離れて拘束されているということのみで労働時間に該当するというものでもありません。
行政解釈でも、
出張中の休日はその日に旅行する等の場合であって、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合以外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない。
としています。(昭23.3.17基発461、昭33.2.13基発90)
休日の出張を命じることは可能?
であるならば、休日の出張を命じることは可能なのでしょうか。
これに関しては、その出張が休日出勤にあたる場合とあたらない場合にわけて考える必要があります。
出張が休日出勤にあたる場合
たとえば重要な機材等をどこかに届けるための出張のように、出張行為それ自体が休日労働と評価されるような場合。
こういった場合には、
- 休日労働に関する労使協定
- 休日労働手当の支払い
- 休日労働を命じ得る旨の就業規則等の根拠
があれば、休日の出張を命じることは可能です。
出張が休日出勤にあたらない場合
他方で、これが単に翌日の勤務日に間に合うように前日の休日のうちに移動するような、休日労働とまではいえない準備行為の場合。
こういった場合には、
- 就業規則等にこういった命令の根拠がある
- 休日の翌日の勤務日に業務が予定されている
このような状況であれば、一般的には休日の出張を命じることは可能とされています。
しかし労働者に対して休日の移動を強いていることは確かですので、実質的な休日の確保という観点からも、
- 休日の移動に関し何らかの手当を支給する
- 特別必要な場合に限定する
などの配慮が必要になるかと思います。
まとめ
以上、今回は出張期間中の休日の取扱いについて紹介しました。
たとえ出張期間中であっても、会社の指揮命令下において業務を行っているような場合でなければ、休日が休日労働になるようなことはありません。
また休日の移動に関しても、移動中も業務にあたるような場合でなければ休日労働にはなりません。
ただし通常の業務よりも精神的な負担が大きいのは確かですので、それなりの手当をしたり、精神面のケアをするなどの配慮を心がけましょう。