年次有給休暇は、原則として発生して2年で取得する権利が消滅してしまいます。

しかし休職や育児介護休業で長期間仕事を休んでいると、なかなか年次有給休暇を取得する機会がないですよね。

そんなとき、休職や育児介護休業の期間中に年次有給休暇を取得することはできるのでしょうか。

とくに休職は無給の場合が多いですし、代わりに年次有給休暇を取得すれば給与も発生して嬉しい話です。

しかし結論としては、原則として休職や育児介護休業の期間中に年次有給休暇を取得することはできないので、その理由を紹介いたします。

年次有給休暇は就労義務の免除

権利の発生している年次有給休暇は、原則として本人が好きなときに取得できます。

しかし年次有給休暇に限らず、休暇というのはそもそも就労の義務のある日についてその就労を免除するものであり、労働契約上の就労義務がない日には取得できません。

このことは、所定休日のようにもともと就労義務がない日には年次有給休暇を取得する余地がないことからも分かると思います。

休職中の年次有給休暇

休職期間とは一般的に、雇用契約上の身分は維持しながらも就労の義務が免除される期間のことをいいます。

休職期間中に年次有給休暇を取得するというのは、すでに就労義務が免除されている日について重ねて就労義務の免除を求めることとなり、理論的に矛盾することになります。

つまり休職期間については、就労義務のある日であるという年次有給休暇を取得する前提条件を欠いた期間ということになります。

行政解釈でも、

休職発令により従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるにとどまり、会社に対して全く労働の義務が免除されることとなる場合において、休職発令されたものが年次有給休暇を請求したときは、労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇の請求権を行使できないと解する。(昭31.2.13基収489)

としています。

育児介護休業中の年次有給休暇

育児介護休業期間中についても就労の義務が免除されている期間であるため、年次有給休暇の取得については休職期間と同様の考え方をすることになります。

ただし、

育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協定に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払いの義務が生じるものであること(平3.12.20基発712)

という通達が発出されており、事前に時季指定や計画付与された休業中の年休に関する取扱いが明確にされている点には注意する必要があります。

休職中や育児介護休業中に発生した年次有給休暇の取得

前述のとおり、取得していない年次有給休暇が残っていたとしても休職中や育児介護休業中に取得することはできません。

では、その期間に発生した年次有給休暇はどうなるのでしょうか。

結論としては、新しく年次有給休暇の権利が発生したとしても、その期間中は取得することができないということになります。

ですので実務上は、休職や産休育休に入る前に年次有給休暇を全て取得してしまう方が多いです。

年次有給休暇の取得義務

またこれらの話は年次有給休暇の取得義務化とも関係します。

2019年より、会社は年次有給休暇が10日以上発生する労働者に対し、1年以内に少なくとも5日は年次有給休暇を取得させなければならないと定められました。

この内容は休職中や育児介護休業中の人でも同じですが、残念ながらこれらの期間は年次有給休暇を取得することができません。

ではどうするかというと、休職や育児介護休業が明けてから年次有給休暇を5日取ってもらうのです。

年次有給休暇の付与から11か月が経過したタイミングで休職や育児介護休業から復帰し、もう残りが1か月しかない。

そんな状況でも、年次有給休暇を5日は取得してもらう必要があるのです。

育児休業を1年以上継続し、1年間ずっと就労義務が免除されているようなケースを除き、年次有給休暇の5日取得義務に例外はありませんので注意しましょう。

まとめ

以上、今回は、休職中や育児介護休業中の年次有給休暇取得について紹介しました。

休職や育児介護休業はすでの就労義務が免除されているため、その期間中に年次有給休暇を取得できません。

しかし、育児休業等の申出がされる前から年次有給休暇取得の時季指定がされていた場合には年次有給休暇の取得が優先されるので注意が必要です。