様々な事情により、正社員だった者が雇用形態の変更等により勤務時間が週30時間を下回ることがあります。

また逆のケースもあると思いますが、このような場合で会社が特定適用事業所等のときには、被保険者区分変更届の提出が必要になります。

おそらく社会保険に関する手続きの中で最も忘れられやすいであろう被保険者区分変更届について、今回紹介いたします。

被保険者区分変更届とは

被保険者区分変更届は、

  • 国・地方公共団体に属する事業所
  • 特定適用事業所
  • 任意特定適用事業所

における被保険者が、

  • 「通常の労働者」から「短時間労働者」に変更
  • 「短時間労働者」から「通常の労働者」に変更

した場合に、発生から5日以内に必要となる届出です。

短時間労働者とは

厚生年金保険法や健康保険法における短時間労働者とは、「通常の労働者」に対して、

  • 1週間の所定労働時間が4分の3未満
  • 1月間の所定労働日数が4分の3未満

このいずれかに該当し、かつ以下の全ての要件を満たす者のことです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 賃金の月額が88,000円以上であること
  • 学生でないこと

特定適用事業所と任意特定適用事業所

特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、被保険者が101人以上となることが見込まれる企業等のことをいいます。

また、被保険者が100人以下で特定適用事業所には該当しない場合であっても、労使合意に基づき申し出を行うことで任意適用事業所とすることができ、このような事業所を任意特定適用事業所といいます。

そして、特定適用事業所や任意特定適用事業所で働く短時間労働者は社会保険に加入することになります。

2022年に法改正があり適用拡大があったばかりなので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

被保険者区分変更届が忘れられる理由

冒頭で、社会保険に関する手続きの中で最も忘れられやすい手続きであると書きました。

それは何故かというと、忘れていても支障がない場合が多いからです。

もし被保険者が少なく特定適用事業所に該当しない事業所であれば、勤務時間が週30時間を下回れば社会保険の資格を喪失することになります。

しかし特定適用事業所だと、週20時間を下回らなければ社会保険の資格は喪失しないため、他の手続きが発生しない場合もあるのです。

従業員からすれば、勤務時間が少なくなった以外に特に変化はありません。

そのため、被保険者区分変更届は非常に忘れられやすいのです。

随時改定(月額変更届)が必要となる場合がある

他に手続きが発生しない場合があると書きましたが、通常はどのような手続きが発生するのでしょうか。

通常の労働者と短時間労働者で雇用形態の変更があった場合、固定的賃金の変動として随時改定の対象となります。

しかし契約内容によっては支払基礎日数が11日に満たないことがあり、そのような場合には随時改定に該当せず、定時決定まで通常の労働者だったときの標準報酬月額が適用されることになります。

育児休業等からの復帰で時短勤務となった場合

育児休業から復帰して時短勤務となり報酬に変動があった場合、育児休業等終了時報酬月額変更届を提出することで通常の随時改定とは異なる要件で改定が行われます。

具体的には、

  1. これまでの標準報酬月額と改定後の標準報酬月額との間に1等級以上の差が生じること
  2. 育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、少なくとも1か月における支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること

の要件を満たすだけで改定が行われるため、定時決定まで通常の労働者だったときの標準報酬月額が適用されるようなケースが少なくなります。

介護等により時短勤務となった場合

介護による時短勤務の場合、固定的賃金の変動として随時改定の対象になりますが、育児休業等終了時報酬月額変更届のような通常と異なる要件はありません。

そのため、通常の随時改定と同じ要件で改定が行われます。

まとめ

以上、今回は、社会保険に関する手続きの中で最も忘れられやすいであろう被保険者区分変更届について紹介しました。

言ってしまえば、特定適用事業所や任意特定適用事業所に限り、週20時間以上30時間未満で社会保険に加入している従業員のみ気を付ければ大丈夫な話になります。

手続きを忘れたところで誰かの不利益に繋がるような手続きではありませんが、働き方が多様化するなかで今後は手続きが必要なケースが増えるかもしれませんので、忘れないように注意しておきましょう。