私傷病で休業したときに、生活の保障として健康保険から受給できるのが傷病手当金です。

精神的な問題で休業する方が増えていたり、最近では新型コロナウイルスで長期間休業する場合もあったりと、傷病手当金を受給できる機会が増えています。

しかし傷病手当金については、支給要件を満たしていても支給額が調整されるケースが結構あります。

そこで今回は、傷病手当金が調整されるケースについて紹介いたします。

傷病手当金の支給要件

まず最初に傷病手当金は、以下の条件をすべて満たしたときに支給されます。

  1. 健康保険の被保険者であること
  2. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  3. 仕事に就くことができないこと
    →医師から労務不能の診断が受けられることが必要
  4. 連続する3日間を含み4日以上仕事に付けなかったこと
  5. 休業した期間について給与の支払がないこと

傷病手当金が調整されるケース

以下の場合には、傷病手当金の一部または全部が調整されます。

給与・手当が支給されている場合

支給要件にある通り、給与の支払がある場合には傷病手当金は支給されません。

ただし休んだ期間についての給与の支払いがあっても、その給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

傷病手当金と同じ傷病等で障害厚生年金または傷病手当金が受けられる場合

同一の傷病等による厚生年金保険の障害厚生年金または障害手当金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。

ただし、障害厚生年金の額(同一支給事由の障害基礎年金が支給されるときはその合算額)の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合、その差額が支給されます。

また障害手当金の場合は、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達することとなる日までの間、傷病手当金は支給されません。

労災保険から休業補償給付を受けているときに、業務外の病気やケガで仕事に就けなくなった場合

過去に労災保険から休業補償給付を受けていて、休業補償給付と同一の病気やケガのために労務不能となった場合には、傷病手当金は支給されません。

また、別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中も、傷病手当金は支給されません。

ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より少ない場合、その差額は支給されます。

出産手当金の支給を受けている場合

出産手当金が傷病手当金の日額より多い場合、傷病手当金は支給されません。

出産手当金が傷病手当金の日額より少ない場合、その差額が支給されます。

なお育児休業給付と傷病手当金は別の制度から支給されますので、同時に受給することが可能です。

退職後に老齢年金が受けられる場合

資格喪失後に継続して傷病手当金を受けている人が、老齢年金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。

ただし、老齢年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合、その差額が支給されます。

※老齢年金受給者が健康保険の被保険者期間中に傷病手当金を受給することになった場合には、老齢年金と傷病手当金の調整はありません。

資格喪失後の傷病手当金の受給

以下の要件を満たしている場合、退職後も引き続き受給することができます。

  1. 被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  2. 資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること

待期期間3日間を満たし、退職日に労務不能であることが条件であるため、退職日に出勤したときは資格喪失後(退職日の翌日以降)の傷病手当金は受給できません。

まとめ

以上、今回は、傷病手当金が調整されるケースについて紹介しました。

傷病手当金は病気やケガによる休業であるため、他の給付とあわせて受給要件を満たすケースが多いです。

その場合、どういった給付は調整されて、どういった給付は調整されないのか知っておくことが非常に重要になります。

またあわせて資格喪失後の傷病手当金についても知っておくことで、より理解が深まるのではないでしょうか。