従業員が育休から復帰する際、育児介護休業法の指針では「原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮する」必要があるとしており、基本的には育休前と同じ職場に同じ役職で復帰することになります。

しかし現実的には、すでに別の人員を補充していたり、育児を抱えながらは難しい職務などの事情から、同じ職場に同じ役職でというのは難しい場合も多いです。

その場合、会社は育休から復帰した従業員を配転することは可能なのでしょうか。

不利益取扱いの禁止と原職復帰への配慮

育児介護休業法は会社に対して、労働者が育休を取得したことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと定めています。

また育休する労働者の配置に関して、育休の申出や育休後の就業が円滑に行われるよう必要な措置を講じる努力義務を会社に課しています。

また育児介護休業法の指針においても、「原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮する」必要があるとしています。

配転の不利益取扱い該当性

上記の「労働者が育休を取得したことを理由に不利益な取扱いをしてはならない」という定めは強行法規であり、違反するような不利益取扱いは無効となります。

そのため、育休復帰後の配転が育児介護休業法で禁止する不利益取扱いに該当しないかが問題になります。

不利益取扱いの判断基準

不利益取扱いに該当するかどうかの判断基準は、基本的には、

  • 時短勤務では職務を全うできない
  • 原職のポストが空いていない

などの配転理由と、それにより従業員が被る不利益の程度の比較になります。

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件(東京高判令5年4月27日)

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件では、育休復帰後の配転に際して配慮すべき職員の「不利益」が賃金(特に基本給)の面のみならず、キャリア形成の面まで及ぶことを示したものとして注目されています。

同判決では、

  • 復帰後、新規に生じたチームリーダーのポストに控訴人を就けなかったことは人事権の範囲内
  • 新設部門の部下を持たない職位に配転し、電話営業などを担当させたことは、職務の質が原職と比較して著しく低下しており、控訴人のキャリア形成を損なうもので、業務上の必要性も高かったとはいえない

として、違法と判断しています。

復帰後のコミュニケーションを

育休復帰後の働き方は、

  • 家庭の協力体制
  • 地域の保育所の事情
  • 本人の意欲

などによっても様々です。

会社が「育児を抱えながらこの仕事は難しいだろう」と一方的に判断してしまうと、従業員側の想定とすれ違うことで紛争の種を生みかねません。

復帰後どこまで業務にコミットできるのか、どのようなキャリア形成や働き方を望むのか、本人と十分にコミュニケーションをとったうえで復帰後の職務を選定することが実務上とても大切であり、また法的にも配転の適法性を高める要素となります。