近年、リファラル採用に力をいれる企業が増えています。
特にコスト面でのメリットが大きいのですが、従業員に対して対価を支払う場合には注意すべき事項もありますので、今回紹介いたします。
リファラル採用とは
リファラル採用とは、主に自社の従業員(社外の取引先の場合も)から、自社に適した人材を紹介してもらう採用方法です。
実際に多くの企業で選択肢の一つとしてリファラル採用が取り入れられていますが、その理由としてはいくつかのメリットが挙げられるからです。
リファラル採用のメリット
リファラル採用のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 従業員が自社に合うと思う人材を紹介するため、仕事にマッチする可能性が高い。
- 広告費やリクルーティングエージェントの手数料が不要になるため、採用にかかるコストを削減できる。
- 既に会社に精通している従業員からの紹介のため、採用プロセスにかかる期間を短縮できる。
- 既に知人のいる環境で働くことで、新入社員の定着率を高めることができる。
リファラル採用のデメリット
一方で、リファラル採用にはデメリットもあります。
- 従業員が自身の背景やスキルセットに似た人材を紹介する傾向にあるため、組織内の多様性が低下する。
- 特定のグループやネットワークのメンバーが優遇され、組織内での「閉鎖的なサークル」が形成される可能性がある。
- リファラル採用は非公開で行われることが多く、採用プロセスの公平性や透明性が問題視される可能性がある。
- 紹介された人材が期待に応えられなかった場合、紹介した従業員との間にも問題が生じる可能性がある。
報酬の供与の禁止
そんなリファラル採用ですが、法律上も気を付けなければいけないことがあります。
それが、報酬を与えてはならないということです。
リファラル採用については法律上の直接募集にあたるため、特に許可を得たり届出をする必要はありません。
しかし従業員を通して募集を行うにあたっては、職業安定法40条において
(報酬の供与の禁止)
第40条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合を除き、報酬を与えてはならない。
とされています。
つまり、リファラル採用にあたって人材を紹介してくれた従業員に対し、賃金とは別に「報酬」を与えることは職業安定法40条に違反するということです。
就業規則に明示する
とはいえ、リファラル採用の効率を高めるために、紹介者に対して一定のインセンティブを与えることが一般的であり、紹介の対価を支払うことも珍しくありません。
その場合には、紹介者への対価があくまでも「報酬」ではなく当該業務を行ったことに対する賃金等が支払われていると評価される必要があります。
そのためにどうするかというと、リファラル採用が従業員の業務の一環であることを就業規則等に明記しておく必要があります。
具体的には、
従業員は会社に対して適切な人材を紹介することによって、会社の採用活動等に協力することがある
といった内容の記載が考えられます。
対価の扱いについても記載を
また、人材を紹介することと対価の対応関係、対価の支給条件(支給金額や支給時期、具体的にどのような場合に支給されるか)を就業規則等で明確にしておくことも重要です。
そして、リファラル採用について支給された「対価」が「賃金」として支払われていることを明確にするという観点から、
- 給与明細に明示しておく
- 税金や社会保険料等についても通常の賃金と同様の取扱いを行う
といった対応をすることが重要です。
まとめ
以上、今回はリファラル採用の注意点について紹介しました。
リファラル採用において紹介してくれた従業員に対価を支払う場合には、就業規則等にきちんと明記したうえで、給与明細や税金、社会保険料についても適切な取扱いをおこなうことが重要になります。
もし就業規則等への記載方法に不明点があれば、気軽にお問い合わせください。