一般的に、所得税を源泉徴収する際には源泉徴収税額表の月額表を用いて計算します。
給与計算システム等を使っている場合には自動で計算してくれますので、あまり気にする必要はありません。
しかしその大前提として扶養控除等(異動)申告書について知っておく必要がありますので、今回紹介いたします。
※税についての疑問点は、懇意にしている税理士の先生に確認をお願いいたします。
源泉徴収税額表の月額表には甲欄と乙欄がある
上記のリンク等を見ていただくと分かりますが、源泉徴収税額表の月額表には甲欄と乙欄があります。
- 「甲欄」を適用
主に1社だけで働く人や、兼業している人が主たる給与の支給を受ける会社では「甲欄」を適用します。適用するには給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出が必要です。 - 「乙欄」を適用
兼業している人が副業先の給与の支給を受ける会社では「乙欄」を適用します。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出しない人や、従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書の提出があった人に適用します。
上記のとおり、一般的な社員には通常「甲欄」を適用することとなり、そのためには扶養控除等(異動)申告書を提出していただく必要があります。
配偶者や扶養親族等を確認
また、「甲欄」で源泉徴収税額を決定するためには、
- 配偶者
- 扶養親族
- 障害者
- 寡婦
- ひとり親
- 勤労学生
の該当についても知っておく必要があります。(給与計算システムにも登録が必要になります)
これらの情報についても扶養控除等(異動)申告書で確認することができます。
従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書とは
従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書とは簡単にいえば、本業で得られる給与が控除額よりも少ない場合に、副業で得られる給与からも控除を受けるために必要な書類です。
>>令和5年分 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書を従たる給与の支払者(副業)に提出する場合、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の右上の欄にマルを付けることとなります。
扶養控除等(異動)申告書の提出
このように、一般的な従業員を雇用して給与を支払う(源泉徴収する)場合には、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していただく必要があります。
では具体的に、いつまでに申告書を提出していただき、会社はどこに提出すれば良いのでしょうか。
提出期限
従業員は、その年の最初に給与の支払を受ける日の前日(中途就職の場合には、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日)までに提出する必要があります。
提出方法
従業員は必要事項を記載したうえで、会社に提出します。
会社は、税務署長や市区町村長から提出を求められた場合のみ提出する必要があります。
そのため、従業員から提出してもらった申告書は会社で保管しておくことになります。
なお実務上は、給与計算をする時点で甲乙の適用や、配偶者、ひとり親等について知っておいた方が良いので、もっと早い段階で申告書を提出してもらったり、口頭で確認したりすることになります。
保管期間
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保管する必要があります。
まとめ
以上、今回は、扶養控除等(異動)申告書について紹介しました。
従業員を雇用する際には様々な手続きが必要になりますが、その中でも源泉徴収や年末調整に関係するのが扶養控除等(異動)申告書です。
給与計算システムさえ設定してしまえば源泉徴収は正しく計算されますが、それとは関係なく書類の保管が必要になりますので、該当する従業員には忘れず提出してもらいましょう。
従業員を雇用したときの事務作業
- 人事
・社員台帳を作成する - 所得税
・扶養控除等(異動)申告書を提出してもらう
・前職の源泉徴収票を提出してもらう - 住民税
・特別徴収切替届出(依頼)書を提出する - 社会保険
・健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届を提出する
・被扶養者(異動)届を提出する - 雇用保険
・雇用保険被保険者資格取得届を提出する